皆様は「無言館」を知っていますか?
「無言館」は長野県上田市にある戦没画学生慰霊美術館です。
無言館の存在は前から知っていた私ですが、気になりつつも行く機会を逃していて。
長野に帰省する道中に立ち寄れたらいいなぁとずっと思ってはいたのですが、なんだかんだ時間が合わなかったりで行くことができていませんでした。

でね。
不思議なのですが、長野から神奈川に帰る予定の前夜、私は戦争の夢を見たのです。
すっごくリアルで。
戦ったり。逃げたり。目の前で人が撃たれたり。
そして生き残った私は、泣いていました。
「自分だけ生き残って申し訳ない。」と言いながら。
そこでハッと目が覚めた。
実家でたまたま父と無言館の話をしていたのも夢の原因だとは思うのですが、「行かなきゃ。このタイミングで行けってことだよね。」と確信して。
今回、神奈川へ戻る途中で立ち寄ってきました。
長野県上田市の山間にある「無言館」。
ここには、画家になることを夢見ながらも戦争で命を落とされた画学生や若者達の絵や作品が展示されています。

駐車場に車を停めて顔を上げると、無言館と書かれた石碑が目に入り、その先に美術館はありました。
木々の間に建つ、コンクリートの建物。

なんだかざわざわする気持ちを落ち着かせるため、大きく深呼吸をして。
ゆっくり、ゆっくりと、建物に向かって小道を歩きました。
建物の横には「記憶のパレット」と書かれた慰霊碑。
パレットの形をしているこの石碑には、戦没画学生403名の名前と美術学校の授業風景が描かれています。

無言館の入り口に辿り着いたものの、気持ちが落ち着かなくて入れなかった私。
少しの間足を止めてから、自身に「よし」と言い聞かせて扉を開けました。

無言館の中は撮影禁止とのことで写真はありません。
ですので私が見て、感じたことを、そのままここに書きます。
戦争の資料館等は今まで何箇所か行ったことがありますが、他とは空気も何もかもが違いました。
中に入ると、ちょうど十字の形をした館内に沢山の絵が展示されていて。
絵の傍らには作者のお名前。
お名前と一緒にその方が何処で生まれ、どんな人物で、何歳で、どんな風に亡くなったのかも細かく記されていました。
中央には、若者たちが家族へ宛てて描いたお手紙や絵を描く時に使っていた画材など、遺品が展示されているガラスのショーケース。
自画像を描かれていた方も多く、お名前の横に飾られているお顔の絵。
遺族の方の言葉が添えられている作品もありました。

帰ってきたら絵を更に学ぶため、海外に行きたいと言っていた画学生。
家族には決して弱音を吐かず、黙って戦争に行った若者。
愛する家族の絵を描いている途中で戦争に行き、完成しなかった絵。
戦争なんかに行きたくない、と流れた涙。
優しい絵や力強い絵
お気に入りの場所の絵や四季を感じる絵
恋人や家族 愛すべき人の絵
じっと黙って、若者たちが生きた証とも言える作品とひたすら向き合い、その方が見てきたことやどんな気持ちだったのかを思い浮かべながら、それらを目に焼き付けていく時間。

次に私は、無言館のチケットで入館できる「傷ついた画布のドーム」へ向かいました。
無言館の手前にある建物です。

中に入ると、天井のドームには画学生の下絵やデッサンが一面に飾られていました。
そしてこちらにも、画学生や若者の描いた作品が壁に展示されています。
私よりも遥かに若くして亡くなった方、同じくらいの歳の方、少し年上の方、
沢山の方のお名前と亡くなった場所や遺族の方のお言葉を読みながら作品に目を向ける。
「無言館」と名付けられた意味が、なんとなくわかった気がします。
傷ついた画布のドームの前には、「絵筆のベンチ」というオブジェと「開かないポスト」がありました。
美術館の建物のコンクリートと同じ色のオブジェとポスト。

オブジェには90本の筆やブラシが埋め込まれています。

この絵筆は、現在活躍中の画家や美術学校で勉強している画学生の絵筆なのだそうです。
そして一目見て誰もが気になるであろう赤いペンキ。

美術館の建物もポストもオブジェもグレーだからこそ、一段と目をひく赤。
2005年6月18日、無言館の入り口にある(先ほども写真を載せた)”記憶のパレット”に赤いペンキがかけられていた事件があったのだそうです。
この事件を実際に「復元」したのがこの石碑の赤ペンキだとのこと。
「無言館」が多様な意見・見方の中にある美術館である事を忘れないために建てられたものだと、オブジェの裏面に記されていました。
そして同じく裏面に記されていた言葉。

“画家は愛するものしか描けない
相手と戦い 相手を憎んでいたら
画家は絵を描けない
一枚の絵を守ることは「愛」と「平和」を守るということ”
画学生や若者たちは望んで戦争に行ったわけではありません。
きっと銃を持つのではなく、戦闘機に乗るのではなく、大切な筆を持って、愛する者がいる場所で、大好きな絵を描いていたかったことでしょう。

オブジェの横にあるポストは開かないポスト。
“平和への願いや夢、誓いなど、あなたの「今の言葉」をご投函下さい。
このポストのまま永久保存されます。”
との説明が記されています。
私は戦争を体験したことがありません。
けれど、若者の夢や命を奪う戦争が世界から無くなって欲しいという気持ちを持っています。
もう二度と戦争を起こしてはいけないと心の底から思うのです。
私は戦争を体験したことがありません。
難しいことも、国のお偉いさんたちの事情も、全くわかりません。
けれど、今、ここに生きている。
生かされているからこそ、戦争があったという事実から目を逸らさずに、胸に刻んで。
この先二度と戦争が起きないように、知って、学んで、活かしていかないといけないんじゃないのかなと思うのです。
力がある訳でも無いし、私一人で何かをできるわけではないけれど。
こうやって綴った言葉が誰かの目に止まり、少しでも心に届いたならば、その人が戦争の事実を知ろうとするキッカケになるかもしれない。
たった一人の目に止まるだけでも。
それが少しづつ少しづつでも広がっていけば。
何かが変わっていくんじゃ無いかなって、思うのです。
日本がもう戦争を繰り返さないことはもちろん、
世界中から戦争が無くなることを心から願っています。

戦後74年を迎える今年2019年。
無言館に展示されている絵や作品は劣化や痛みの進行におそわれているそうです。
この作品を残していくために行う修復・複製化・保存環境の整備にかかる資金の寄付を募っているという無言館。
少し前の新聞記事には「無言館への来場者数が年々少なくなっている」と書かれていました。
画学生や若者たちの作品を通して命の大切さや戦争を学べる無言館は、これからも必要な施設ではないでしょうか?
残していきたい、と私は強く感じました。
無言館をご存じなかった方、
知っていたけれどまだ行ったことが無いという方、
是非、一度は足を運んでみてくださいね。

「戦没画学生慰霊美術館 無言館」
〒386ー1213 長野県上田氏古安曽字山王山3462
Tel.0268-37-1650
HP:https://mugonkan.jp/about/
最後に。
無言館の館主”窪島誠一郎”さんのお言葉を引用させていただきます。
あなたの絵は朱い血の色にそまっているが
「無言館HP館主ご挨拶」より
それは人の身体を流れる血ではなく
あなたが別れた祖国のあのふるさとの夕灼やけ色
あなたの胸をそめている父や母の愛の色だ
口をつぐめ、眸(め)をあけよ
無言館のチケットに書かれていた言葉より
見えぬものを見、きこえぬ声をきくために

戦争が無くなりますように。
世界が平和でありますように。
子ども達や若者が、安心して夢を追える世界になりますように。
I wish the world peace.
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